バンド「うずまき」のブログ

バンドの事、音楽の事、楽器の事、その他少々の思いつきについて

CD「ヴィンテージ ゴールド」全曲解説⑦

 7曲目はバンド名と同じ「うずまき」

 

 バンドとしてのうずまきを始めるきっかけとなった曲。以前の音楽活動を辞めてから10年後のことでした。

 

 僕が最初に本格的なライブ活動を始めたのは21の時、「ラッキィズ」という名前で3人組のアコースティックユニットでした。自宅で録音した2曲のオリジナルカセットを聴かせて「一緒にやろうよ」と勧誘したギタリストと、その友人のベーシストで当時の職場からほど近い四谷の「コタン」に出させていただいたのが始まりです。

 

 コタンのマスターはオリジナル曲至上主義で(笑)ライブでコピーを演るのを許してくれませんでした。出演のためのオーディション時にはオリジナル曲が2曲しかなかった為、急遽5曲ほど書き上げライブに臨んだ思い出があります。

 

 「ラッキィズ」はマスターにも気に入られ、月一くらいのペースでライブを演らせてもらいましたね。お客様の反応も悪くなかったように思います。ごく少ないながらファンもいたような。そして四谷コタン以外にもイベント的なところにも出ていたらしいです。実は僕自身この辺の記憶があまりないので、これは他のメンバーに聞いた話なんですが(笑)

 

 このラッキィズの最後は、当時TBSで深夜に放送されていた「イカすバンド天国(通称イカ天)」への出演でした。最初のビデオ審査の申し込みから半年くらい経ってからの出演決定だったので実はすでにラッキィズは解散状態だったのですが、せっかくのテレビ出演だからやろうよ、という事でまた集まりました。

 

 結果は「完奏」(番組をご存知の方はわかると思います。この番組、審査員のNGが一定数に達すると途中で演奏ストップなんです。)そして審査員特別賞を受賞!

 

 ただしさっきも言ったようにすでに解散状態にあったため僕の中では完全にやる気を失っており、収録終了後他のメンバーとろくに口も聞かずTV局からいただいた帰りのタクシー代を3等分してさっさと帰ってきてしまいました。その後他のメンバーとは10年間音信不通。今となっては彼らに本当に申し訳ないことをしたと反省しております。

 

 ラッキィズの曲はほとんど僕が書いていました。素人の作るオリジナル曲としてはそれほど悪くなかったと思います。最初は自分でも「お、俺って才能あるかも」なんて自惚れていたんですが、ある時ふと思ってしまいました。「俺の曲って何を歌ってるんだろ?、何を伝えているんだろう?」

 

 当時自分がリスナーとして好きだったアーティスト達の曲にはそれぞれいろんな思いが込められていたり、伝えたいメッセージが明確だったりして、曲としての存在理由がある。そういった曲に比べると自分の曲はただメロディーに乗りやすい言葉を意味ありげに並べただけのガラクタだ、ゴミだ、存在する必要なし!と。

 

 そもそもアマチュアバンドのオリジナル曲にメッセージも存在意義もクソもないんですが、一旦そう思ってしまうともうダメなんですね〜でラッキィズ解散、イカ天後10年間音楽から遠ざかってしまいます。これが26歳の時。

 

 36歳になった僕はあるきっかけからまたライブをやりたい、と思ったんですがさて曲をどうしよう、あの過去のガラクタを演る気はおきないし、また新しく曲を書くか〜という事で出来たのがこの「うずまき」。すみません、前置きが本当に長かったですね(笑)

 

 この曲の「うずまき」とは指紋の事。僕はいわゆる在日韓国人の三世です。当時の法律に基づきで16歳の時に外国人登録証(在日外国人のIDカード)を作り、指紋を登録しました。その何年か後にある外国人がこの指紋押捺について異を唱え、社会問題になり、最終的に指紋押捺は廃止となるという出来事があり、そのことを歌にしてみたのがこの曲です。

 

 曲の良し悪し、題材の是非は別として、それまでの自分の曲作りの無意味さに絶望した僕が、初めて自分の中にある何かしら意味のあるものを曲にできたという、本当に画期的な瞬間でした。これをきっかけに自分の曲作りのスタンスを確立することができ、いまに至るわけで、全てはここから始まったのです。なのでここから再スタートした音楽活動を「うずまき」と名付けました。バンド「うずまき」誕生秘話(笑)

 

うずまき  作詞・作曲 みたもとき

 

その日がくると 誰かが言う
声をひそめて 耳元で言う

 

君の手の中で うずまいている 
それを見せてくれ ひとつ見せてくれ
とらわれたような あきらめたような 
そんな気分も ひとときのこと


「頭にくる」と  誰かが言う
声を荒げて 人前で言う

 

君の手の中で うずまいている 
ここで見せてくれ 俺に見せてくれ
奪われたような  はじかれたような 
そんな気分も ひとときのこと


ひとつひとつに それだけの理由
ひとりひとりに これだけの自由

 

君の手の中で うずまいている 
あれを見せてくれ 全部見せてくれ
うなだれたような はかられたような 
そんな気分も みんな過去のこと

 

うずまき「ヴィンテージ ゴールド」

絶賛発売中